IFOCオリジナルブラシレスESC(構想~作図まで)

発端

以前から参考にしていたドイツ発祥のVESC projectが結構大きな展開になっているっぽい。
センサレスベクトル制御を行うブラシレスモーター用のドライバーで、海外ではスケートボードにブラシレスモーターを積んで楽しんでいるらしい。

日本では道交法があるためスケートボードは流行る気配はなく、量産してもまぁ売れないだろうなとは考えるものの、「今後ブラシ付きDCモーターはブラシレスDCモーターにどんどん置き換わっていく」という未来が見えている以上、一度はブラシレスモーターの基板を製作したことのある者にとっては、センサレスベクトル制御(I-FOC)を実現する基板およびソフトウェアを作っておきたい。

っていうか本業がとてつもなくつまらない展開になっており、声も通らない環境が出来上がりつつあるため、副業で何か作れるように準備だけしておきたいのが本音。

構想

スケートボードやドローンなど、汎用的に使える特化していないESC(Electric Speed Controller)を作ってみたい。なんかamazonとかで適当に探せばパッと出てくるBLDCモーターに接続して電源つないだらとりあえずセンサレスベクトルで回る感じのやつ。

前回作成して販売委託している実験基板はマイコンが乗っておらず、単体では制御ができなかった。
ESCを名乗るにはマイコンが必須。そして、多目的ESCなので放熱器(ヒートシンク)が簡単に取り付けられるものにしたい。つまり、

  • 安価で無難でドキュメントがいっぱいあるSTM32F4のマイコン使う
  • 安価で世間一般で手に入りやすい放熱器(M.2 SSD基板と似た外形の基板)に対応した外形にする
  • ノウハウがそこまであるわけじゃないので、無難にオールインワンパッケージのTIの3相ゲートドライバを使う

というものにしたい。
正直マイコンが載った基板を作ることすら初めてなので、知識すらあまりない無謀な挑戦の模様。

先に基板描く(2020/12/W2~)

ソフトウェア書くにも実験をするのにも、ひとまず基板そのものが必要になる。
まぁいうて金は潤沢に使えるので、何も考えず先に基板を描いていくこととする。

KiCADで設計している画像1
▲データシート見ながらKiCADでお絵描き(いつものように部品ライブラリから作成)

とりあえず、前回の実験基板でもDRV8301を使ったのでその後継製品っぽいDRV8323RSを使うことにする。新製品っぽいので部品ライブラリも中途半端だったので自分で作ることにする。

基板描くのも考えるのもしんどい(2020/12/W4~)

ドライバーとMOSFETアレイ画像
▲ドライバーとMOSFETアレイ
stm32f4マイコン周辺回路(作りかけ)画像
▲stm32f4マイコン周辺回路(作りかけ)

考え直し(2020/12/W4~)

データシートを見つつ、回路を作っていくうちにパラメータの不整合がチラホラ。マイコン選定レベルから考え直したほうがいいため、実質やりなおし・・・。

  • STM32F446REは、RAMサイズやらが小さい。STM32F405かSTM32F407を使ったほうがコストパフォーマンス高いし拡張性優れる。VESCもSTM32F405使ってるっぽい。
  • ドライバーにDRV8323RS(降圧コンバータ付き 48pin)使おうと考えてたけど、ヒートシンク取り付ける際に、インダクタの高さが邪魔になる。
    けど降圧コンバータ本体の近くにコイル置く必要がある。
    →もう降圧コンバータ別で付けたほうが早くね?
    DRV8323S(降圧コンバータ無し 40pin)
  • DRV8320/DRV8323は、MOSFET駆動に使用するゲート抵抗とプルダウン抵抗が設置不要。が、それが故に流せるゲートドライブ電流に1Aという制限がかかっているので、Qgtやターンオフ時間から計算して使えるFETを選定しなければいけない。
    →耐圧や電流値にいろいろと制限がかかる
    →意外とMOSFETの選定が難しい(パッと一覧にできない)
回路を組みなおした画像
▲いろいろやり直した最終結果(これが最終解とはいってない)

前提作業は概ね完了(2021/01/W1)~

年末年始、仕事全然休めず。手当も寝てたほうがマシなレベル。2021年が明けてから1週間を過ぎてからようやく設計を再開。

ドライバーをDRV8323に選定し、降圧コンバーターもLMR36520(5V/2A)に決定。マイコン電源用の3.3VはTPS746(3.3V/1A)。謎の意地でTEXAS INSTRUMENTS製品で固めたった!!!!
まぁ数あるメーカーのページ渡り歩いて探すのが面倒だったってのが一番大きい。

降圧コンバータ部分とLDO部分画像
▲降圧コンバータ部分とLDO部分


前述の問題(ゲートドライブ電流上限値)につき、MOSFETは厳選しなければならない。メーカーはいくつか合併に合併を重ねておりそれほど多くないのが救い。

継続的に新製品を繰り出しているVishay、東芝、Infineon、ONsemiに絞って、シンク1.0A/ソース2.0Aに収まるものを探す。

companyProductVds[V]Ids[A]Ids_pulse[A]Ron[mohm]Qg[nC]Qgd[nC]tr[nSec]tf[nSec]Sink/Source[A]X[mm]Y[mm]Height[mm]Cost[JPY@1]
InfineonBSC070N10NS31009036074271080.7/0.8755.156.151170.9
VishaySiR580DP801463002.750.63.9880.488/0.4885.156.151.04999999
OnsemiFDMS4D5N08LC801166334.251619170.316/0.3535.16.151287
InfineonBSC060N10NS310090360651916120.563/0.755.156.151253
InfineonBSC047N08NS3G801004004.7521017110.588/0.9095.156.151274.4
VishaySiDR668ADP1001042004.85411.418100.633/1.145.156.150.56265.4
VishaySiR510DP1001263003.65431080.3/0.3755.156.151.04999999
TOSHIBATPH4R008QM80864003.15712.316200.769/0.6155.156.11999999
OnsemiFDMS3D5N08LC801367453.559720220.35/0.3185.16.151313.7
InfineonBSC036NE7NS3751596363.663.412.618100.7/1.265.156.151334
VishaySiDR680DP801002002.869.59.124110.379/0.8275.156.150.56309.2
TOSHIBAXPH4R10ANB100702103.4751621220.762/0.727560.95241.8
▲今回選出したDRV8323にギリギリ合致するNchMOSFETリスト

オン抵抗が低くQgが低くシンク1.0A/ソース2.0A以内のもので、且つ、現在販売中であり、mouserおよびdigikeyで在庫が存在するものを見た結果、今回はInfineonの「BSC047N08NS3G」になりそう。(80V/100A/RDSon4.7mΩ)

MOSFETの選定も終わってから構成みると、もうゲートドライバ以外ほとんどVESCということに気付く・・・。

もうこの際VESC互換とし、オープンソースの恩恵にあやかって、ヘッダファイルでピン配置変えたらVESCとして動作するように再設計。
回路図いろいろ見てみるとVESCは本当に完成度が高い。設計者は本当に悩みに悩んでこの回路に辿り着いたということがよくわかる。
互換性のためにピン配置変えないとか、前方互換のためにいろいろ苦労してるんだなぁ・・・。

私は今回初回設計なので、マイコン側ピン配置は最適化して、全ピン有効活用できるように試行錯誤。

マイコン側結線構想画像
▲マイコン側も余りピン出さないように引き出したい

この作業が終わり、RやCや諸々の定数決めたらいよいよ基板レイアウト作業か・・・。

作図完了、部品選定完了(2021/01/W4)~

ようやく作図完了(部品選定をしながらの作図だったので部品選定は耐圧と仕様数値をあわせるだけでOKだから楽)。
※なお、現段階でこの内容で動くかどうか設計者自身でもよくわかってない模様

そして、いよいよここからが本当の地獄。

未配線基板サイズ確認画像
▲基板サイズオーバーの未来がうっすらと明確に見える

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