コロナ禍で半導体不足が重なって、基板発注もできないこんな世の中になってしまっているので、何かものを作っていないと死んでしまう病にかかっている人はとても苦労していると思う。
マイコンやらなんやらそういう制御を入れなくても何か作れないかと考えているところに、大阪の日本橋にある老舗が移転閉店するためにセールを開いているとのこと。
とりあえずなんか面白そうなものを買い集めているうちに、高電圧発生装置を作ろうと思い立った。
使い捨てカメラを使い捨てない方針
高電圧を発生させるための装置でググると、使い捨てカメラのフラッシュに使われる回路を引っぺがして、コッククロフト・ウォルトン回路に接続してさらに昇圧するっていうのがここ十年くらいのトレンドらしい。
いや、使い捨てカメラて・・・
今日び幼稚園児がカメラ付きケータイ持ってる時勢で・・・。
使い捨てカメラて・・・。
わざわざ高電圧つくるために古代遺物ぶっ壊して使いまわすのはなんかよくないなぁ・・・と判断したため、現状売ってるパーツでそれっぽい昇圧回路作れないかと考えた。
1次昇圧回路:クラップ発振回路→小信号用トランス
手ごろに手に入る電源が単4とか単3とか18650のLi-ionバッテリーで、
そこからトランスを用いて昇圧することにする。
トランスで昇圧を行うためには、連続して変化する電圧が必要で、
直流から無理矢理交流・・・というかそれっぽいパルスを発生させる必要があるらしい。
それっぽいパルスがあればそれっぽく昇圧できるらしいので、
- 部品点数を少なく
- マイコンなどは使わない
- 何より脳死で組める
できるだけ難しいことを考えず、脳死で組める回路を目指す。
それっぽいパルスを発振させる回路に、
「ハートレー発振回路」っていうのがあって、
その回路を発展させた?「コルピッツ発振回路」を
さらに発展させた「クラップ発振回路」を使う。
だいたいの回路図では2SC1815とかの汎用npnトランジスタを使ってるけど、半導体不足の影響を受けているのかどうかわからないけど入手性があまりよくない。
「・・・・。」
「まぁよーわからんけど同じ極性のNchMOSFETやったら動くんやろ^^」

今は回路シミュレーションも発達してて、回路組む前からいろいろわかって廃棄部品が増えないのが最高に良い。手持ちとか安売りでまとめ買いした部品をテキトーに組むだけで発振回路を動かすことができるいい時代・・・。
シミュレーションは「circuitjs」のデスクトップスタンドアロン版が便利で、これで手持ち(予定)部品から発振する条件を探す。
試した結果インダクタに結構電流ながれて長時間稼働でアツアツになることと、MOSFETのゲートソース間電圧が場合によっては22Vに達することが分かった。ホントいい時代に生まれた・・・。昔はこんなの全部手探りだったんだろうな・・・。

今回組んだ回路は、下記のようなもの。(回路図は上画像のとおり)
シミュレーションだと80KHzくらいの成分が特盛のよくわからんノイズを生成して、トランスから線間電圧100Vくらいの交流ノイズを出力することができる。
- 33KΩ ±10% 1/4W 汎用炭素抵抗
- 120μH パワーインダクター 最大定格800mAくらい (熱くなるので大きめのやつがいい)
- Nch MOSFET(3Aくらい流せれば余裕、ゲートソース間耐電圧[Vgs]が±30Vのやつを選んだほうがいい)
- 0.1μF 耐圧50V セラミックコンデンサ
- 0.01μF 耐圧50V セラミックコンデンサ
- 小信号用トランス AT403-1(巻数比10.3:1)
- 電流制限用抵抗(好みに合わせて)
やろうと思えば部品は秋月電子で全部そろえることができるし、前述の回路シミュレーターを使えばもっと強いキミだけのオリジナル回路でライバルに差をつけることができるかもしれない。
正直言うとシミュレーションする限りではMOSFETよりnpnトランジスタのほうが発振周波数が少なくて、小信号用トランス側のことを考えると効率がいいという可能性もある・・・。
まぁ汎用トランジスタよりMOSFETで回路組めたほうが強そうで見えるってだけなのでお好みで。
2次昇圧回路:コッククロフトウォルトン回路

トランスで無理矢理昇圧したノイズっぽい電圧を、みんな大好きな「コッククロフト・ウォルトン回路」(略:CW回路)に食わせてさらに昇圧する。
作ったCW回路はググるとよく転がってる「半波整流型CW回路」ではなくて、「全波整流型CW回路」。最終的にプラズマ生成していろいろ遊びたかったし、何よりもコンデンサとダイオードが余るほどあったので試しに作ってみた。
ちなみに発振回路の特性上、+側の発振が多いため交流なのに極性が存在するという・・・。逆接続すると出力電圧が極端に下がる。(トランス二次側巻き線の終わり側をCW回路の仮想GNDに接続するのが正)

トランス二次側巻き線の始まり側に2.7mHのパワーインダクターをくっつけているのは、なんかそういう論文を見かけたので・・・、あと、やっぱりまとめ買いしすぎて不必要にパワーインダクタが余っていたのでつい。このパワーインダクターなしでも普通に動作します。(正負極を見分けるためにつけてる)
CW回路は回路としてもわかりやすいし、継ぎ足せばどんどん昇圧できるし、何より各段の耐圧は入力線間電圧の2倍で済むので、安いコンデンサやダイオードでも(空気の絶縁破壊電圧を超えてしまわない限りは)それなりに高く昇圧する回路を組むことができます。
今回使用したダイオードとコンデンサは、
- Vf0.5V 耐圧800V 逆回復時間500ns スイッチング用ダイオード
- 3300pF 耐圧2KV 高耐圧セラミックコンデンサ
なんの考えもなしにテキトーに組むと・・・、

こうなる。(そして、3回動作しただけで床に落としたら内部で破損したらしくただの文鎮と化す)
なので、多少面倒でも空中配線はやめて、素直にブランク基板に取り付けていったほうがいい。
で、作り直したのがこちら。

だいぶスッキリしたし、床に落としたくらいでは壊れなくなった。はんだ付けはめちゃめちゃ時間かかったけど・・・。
(後段に行くにしたがって空中放電しやすくなるので距離を開ける必要があると勝手に考えてるけど意味があるのかどうかは不明)
放電実験

用意したもの
- 充電済みのLi-ion 18650電池 (3200mAh) x 2 (直列でおよそ8V)
- 18650用電池接続ケース + ON/OFFスイッチ
- クラップ発振 + 昇圧トランス回路
- 13段全波整流型コッククロフト・ウォルトン回路

入力8.02Vで1段目出力約520V、2段目出力約1020Vだったので、計算上1段あたり20Vの電圧低下と考えると、13段でおよそ6.5KVの出力になっていると思われる。(マルチメーターの限界が1300Vくらいなので測定できず)
もちろん感電すると静電気の3倍くらい痛いし、下手したらその辺の金属に放電して発火しかねないので実験後は必ず電源切ってコンデンサの放電を十分に行うことと、CW回路とトランス間を切断しておくことを忘れずに!!
次はこれ使って簡易真空チャンバーでプラズマ発生させたいなぁ。